KANAZAWAyuuki
春に、森で、人に会いに。2
更新日:2021年7月1日
北海道にある森町(もりまち)。
うわさの温泉に潜入!旅エッセイ【その2】

誰もいないのをいいことに、すちゃ――ッと服を脱ぎ、がらりとドアを開ける。
どわ!これはわたし史上、初の浴場。
薄暗い空間の中に、湯船が3つ。屋根の隙間から、左斜めに太陽光が差し、静かな光の線が湯船へと注がれている。湯船に入ろうと床を歩くと「あつ!熱!!アツ!」とやや派手目に飛び跳ねる。源泉かけ流しだから、床に温泉が流れているのだ。
左側のお湯は熱め、右側の2つはそれよりもぬるめになっていた。温泉成分で、床は芸術的に湾曲した模様を描いている。
ぬるめの方のお湯にゆっくりと浸かると、心地よい温泉の香り。あふぅぅぅぅ――――…誰もいないのをいいことに、大きく息を吐く。声だけ聞いたらおっさんが入っているかと思われそうだが、すみません。アラフォーオンナです。お許しを。
んもう、ゆっくり入っていたい気持ちになるが、混浴なので若干気持ちが焦る。後ろ髪を引かれつつ湯船から退場。
玄関に戻ってソファに座ると、座面と同じくらいカラダが沈んだ。おい、面白いじゃないか!そうしていたら、ちょうど入浴に来た男性のお客様が。函館から時々入りに来るそう。
時間が重ならなくてセーフ!いつだってココロはオトメなの。
おじいちゃんにお礼を伝えにお部屋を覗くと、目の前5センチの距離でパソコンと対峙していた。近い!近すぎる!しかもスマートフォンも2台持ちというから、びびる。新旧、なかなかの揃いっぷり。
ほかほかしたカラダで、宿を出た。
さっき気になっていた、煙の工場みたいなものが何なのかちょっと調べると、どうやら地熱発電所らしい。昭和57年に作られ、カルデラ盆地にあって民家に近い!というのも珍しいらしい。
見学ができるようなので向かってみた。
その途中、「濁川神社」とやらを見つけて立ち寄る。
旅先で、神社を見つけると、つい寄りたくなるわたし。
こちら、何が面白いって
「お賽銭箱がポスト」だった!!

とはいえ、暖かい季節には違うかもしれないのでご容赦ください。でもぜひ見てみて。ポストに入れると、ちゃりーん♪とうまいこと内部の箱に入るから!!
さて、発電所へ向かおう。地熱エネルギーだとかなんだとか、知識はほぼゼロのわたし。だけど、ごめん、工場がスキだ。工場夜景とか、もくもく煙とかスキ!そういうわたしのような人間には、ここは隠された聖地!間近に見られる迫力は、半端ない。
発電所への道には太いパイプが、盆地からずっと続いている。恰好いい!!感嘆符を何個つけても足りやしない!というくらい格好いい。時々蒸気が、ばふっとしゅわっと出ているのもいい。
わたし自身も、興奮と温泉の熱で「自噴状態」のまま、中を見学。まさに無知だったことをパネルを使って職員の方に丁寧に説明してもらえた。あ、あの太いパイプはまさに「熱い蒸気」が通っているのかと感動。
この熱を利用して、この濁川の地域ではトマトやきゅうりが栽培されているそう。あ、あの最初の看板はそういう言う意味だったのか。寒い北海道の大地でありながら、なんと年2回収穫できるらしい。誰もが知るあのテーマパークに冬出荷をしていて、森町のブランドトマトらしい。
発電所の周りに多く見かけたビニールハウスは、そんな美味な野菜が作られているのか。どこで買えるのかな?あとで聞いてみよう。
蒸気タービンを見せてもらう扉を開けると、ごぅうううん!と大きな音がした。まさに蒸気を取り込んでいる場所だ。工場っぽくてわくわくすると同時に、ここで地球の力を分けてもらってエネルギーを作っているって単純にすごいな、と思う。そしてそれらを操作しているコントロールルームへと進む。
やばい。これ、本能にくる!
あうう!スイッチを押したい!!
日本でも8番目にできたこの発電所だけに、やや古いのがまた今となっては魅力の一つ。それが中央制御盤。壁一面にどわー――ッとスイッチが並ぶ。ちょっとしたアートにも見えるが、本能的にそれを触りたくなるがそこは大人なのでぐっと抑える。
ふう、危ない危ない。わたしがアラフォーでよかったね君たち。
見学を終えて外に出ると、煙を上げる冷却塔が、また神々しく見えてくる。「あの外側の枠と、緑色のところは実は〇〇なんですよ」という職員の方の一言に驚愕。再度冷却塔をバックに写真を撮りたがる阿呆は、わたしだけではないはず。あ、お話は実際に行って聞いてね♪
発電所の坂を下りて戻る。ここにあるビニールハウスの多くが、地熱の恩恵を受けて美味しい野菜を作っているのか。すごいなぁ。さっきの話を思い出しながら見ると、また違う気分になる。
この濁川温泉には、数件の旅館の他に「いわゆる観光施設」はない!
郵便局、神社、お寺、小さな商店…本当に必要最低限の施設と、その土地を愛する人々のおうち。盆地に囲まれた、静かでありながらも、力強い土地。地球からの恵みを受け入れ、それを生かし、大切に寄り添う人たち。
お寿司屋のご主人に言われるまで、行くのをためらっていたけど。来てよかった!
旅はその時の、面白さがまたいい。
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見てみるだけはタダだ(笑)
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※この旅エッセイは2019年3月に、森町・森観光協会発行した、オリジナルタブロイド誌「foreST.」に掲載されているものを、さらに加筆したものです。
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