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  • 執筆者の写真KANAZAWAyuuki

南富良野の美しさは、いつだって無防備だ③

更新日:5月4日

前回の続き


 身支度をして、朝食へ向かうことに。外に出ると、気持ちよいピリッとした空気と、カラマツの樹がまるで絵本の世界のよう。大きく深呼吸して、レストランへ。美しい洋朝食が、昨日の野性的な夕食と対比して非常に良い。


 小さなグラスに入った緑の飲み物が気になったので、すでに飲んだ2人に「これ何?」と聞く。同時に「メロンジュース」「スムージー」と返答。え?意見が分かれてるんですけど?と笑って口に運ぶと、それはスムージーだった。

 どこでメロンの味がしたのか理解できないが、彼は昨日の料理担当。昨夜の夕食が、味付きの肉でよかった。


 さあ、腹も満たされたところで宿をあとにし、今日は3人でカヌーに挑戦する。午前中のかなやま湖は予想以上に美しく、青空の下、湖面に映る山々と緑の木々に釘付けになる。ここでカヌーに乗れるとはなんと贅沢なことか。


 早速、パドルの使い方を教えてもらう。聞いた通りに腕を動かすが、先生の動きと違うことが我ながらわかる。筋肉痛のせいかもね、と自分を慰める。「これね、1日やっても出来ない人は、本当に出来ないから!」と明るく言われたので「じゃあ仕方ないね、あたし出来なくてもね」と返すと、やっぱりそうと判断したのだろう、2人乗りのカヌーの前席に乗せられた(後ろが船長役)。

 ゆっくりと湖に漕ぎだす。パドル使いの良し悪しはわからないが、思った方向にカヌーが動いてくれることに感動する。かなやま湖の水に反射する山々を割るように進む。パドルが放つ波紋がきれいで、ぼうっと見ていたら「ほら!漕いで漕いで!」と声が聞こえた。我に返ると水が近すぎてやや怖い。わたしは泳げない。

 正気に戻りすぎた自分を先生は感知したのか「あのね、ひっくり返りそうで怖いって思っても、案外そんなことないから。怖がるだけ無駄だから」とおっしゃる。無駄?む、そうなのか…大丈夫なものなのか。そういえば大きいカヌーなら子どもも乗れるんだもんね。

 岸に戻ってもう1人の仲間に、乗りたいでしょ?しゃーないな代わってあげるよ、とパドルを渡す。彼らを乗せたカヌーは、楽しそうに再び湖に戻っていった。先導する先生のカヌーを追いかけるように、どんどん沖に行くので、わたしは彼らを見ようと自分の足で陸から追うことに。

 丘を登った先には、釣りをしている知らない2人組。そしてその手前にはラベンダー畑が広がっている。今は時期ではないが、きっと7月にはそれは美しい景色なのだろう。想像して再訪を願う。


 ちょうど逆光でみんなの顔は見えないが、太陽の光で輝く湖面の向こうで2艘は近づいたり遠ざかったりしている。なんて神々しい眺めだろう。まあ、乗っているのは3人の面白いオジサンたちなんだけどさ。

 有意義な時間を過ごし、そんな仲間たちにも別れを告げた。



次回につづく

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