KANAZAWAyuuki
南富良野の美しさは、いつだって無防備だ①
更新日:4月22日

新千歳空港からクルマに乗って2時間弱。南富良野の駅についたら、あれ?と気が付く。「ぽっぽやだ!」と知らずに来てしまったことと、つい口に出してしまったことを恥じながら、クルマから降りて展示されているあれこれを眺めた。1995年にベストセラー小説「鉄道員(ぽっぽや)」を原作として映画化され、高倉健さんが、しぶくて恰好良かったあの映画。
舞台はここだったのか。無知で本当ごめんなさい、と思いながら駅構内に残されたセットなどに感動し、駅を後にする。
道の駅に向かっていたら、左手に可愛いカフェが見えた。
思わず左折してそちらへ。明るい店内に入ると、そこは薪窯を使ったピザ屋さん。メニューを覗くと美味しそうなラインナップ!本来なら、ハラペーニョと大ジョッキの生!といきたいところだが、運転があるからそうもいかない。心の中で大号泣し、自家製ソーセージのピザとオレンジジュースを頼んだ。
1枚で結構ボリュームがあったが、焼きたてのもちもち加減にぺろり完食。ああ、満足。お店のご夫婦にお礼を言って店を出るとクルマがあった。
お前のせいでわたしはオレンジジュースだったんだぞ!
と叫んでみるが特に反応はない。アルコールは夜まで我慢だ。せっかくだからクルマで南富良野を思い切り堪能してやろう。
天気もいいので、こんな日こそドライブ。日本新八景のひとつと言われている「狩勝峠」を目指した。南富良野町と、新得町の境にありなんと標高644メートルだという。む、さ、し、のスカイツリーよりも少し高い。この西側と東側で「日本海側」と「太平洋側」として川が分かれているらしい。そんなスケールの大きい分岐点を目指す。
町の中心部を離れると、あっという間にクルマも人も減って自然が迎えてくれた。久しぶりに運転するわたしにも、優しい街だ。見通しもよく、渋滞もない。緑の木々と時々ほっとさせてくれる古い建物がまたいい。
いくつかカーブでアクセルを踏んでいるうちに、峠に到着。クルマを停めて柵の向こうを覗いてみると、それは美しい光景だった。町の90パーセントが森林だという南富良野が、目の前に広がる。いや、これもほんの一部だろうけど。感動するわたしの後ろで、他のクルマから出てきた人の声がした。「展望台に行こう!」3人組の賑やかさに思わず振り返ると、道路の向こう側に大きく「狩勝峠展望台」と書かれている。
あっちなの!?
3人組に習って展望台から眺める。十勝に広がる雄大な岳を背にどこまでも続く山並み。確かにさっきとは違う。北海道のスケールを鳥瞰図のように見られる貴重な場所。
さっきうっかり?感動していた景色とこちらを比べるのも面白い。北海道の地形を目で感じられる壮大さ。新日本八景を体感すべし。
来た道を戻る。そろそろ丁度良い時間だ、と目的地に向かう。今日はカーリング体験を予約しているのだ。ひゃっほう。テンションが上がる。
「カーリング」と聞くと北海道では北見市が有名だけど、なんと南富良野町出身のオリンピアンは3名もいるらしい。ここで今回の旅の仲間がようやく合流し、3人で体験をすることになった。
指導してくれるのは、この町の小学生たちに教えている先生。左と右、滑る滑らない設計になっている特殊な靴を履くだけでちょっと緊張する。氷の上に乗ってみると、変に力が入っているのが自分でわかる。「腰をもっと落として!」と叱咤激励されながら、言われるままに練習するが、ちっともうまくいかない。
他の2人は、思いのほか格好よく出来ている。くそう、これが運動神経の差なのか?何なのか?先生が遠くで「ここに向かって!」とゴールを示してくれる場所に、ストーンを運ぶ。うまいうまい、と褒めてくれるが、自分でもそうでもないことくらいわかる。もう大人だからな。
とはいえ、カーリングの点数の付け方や、ストーンの話を聞いていると、今までテレビで観ていたカーリングがもっと身近に感じた。今度誰かに解説してやりたい。ちょっと知識が増えて、実際に体験してみると全然見方が違ってくる!もうわたしは経験者だからね、そこんとこよろしく。
心地良い疲労感のまま、3人で道の駅に向かった。
次回につづく