KANAZAWAyuuki
つ「氷柱」

わたしは金沢生まれで、18歳までそこで暮らした。
日本海側の金沢は冬にはそれなりの雪が降った。子どもの頃の記憶だから多く感じたかもと思い、改めて調べてみると1981年の石川県の年間積雪量は523㎝、1986年には689㎝という記録もある。2020年前後では100㎝程度だから、やはり昔の方がたくさん降っていたんだなと思う。
雪の降らない地域の人にはピンとこない数字かもしれないが、札幌は常に500㎝を超える地域。これだけ積雪量があるにもかかわらず、200万人規模の都市というのは、世界的にも札幌だけと言われている。でも、ここ数年は300~500㎝程度のようなので、やはり札幌も、雪が減ってきているような気はするよね。
といいつつ、これを書いている2022年の冬は阿呆みたいに降ったので、記録がどうなるかは見ものだと思っていたが、なんと486㎝だった。
大したことないじゃないかい!!
一時的な降雪量と、排雪システムが影響したのかな。はて。
さて、話を金沢に戻す。子どもの頃は登校途中でもよく「つらら」を見かけた。帰り道には、ちょっと溶けかけた細いものを狙って「ポキン」と折り、ぺろっと舐めた経験がある。だいたい、千歳飴みたいなサイズ感。そんな思い出をもつ大人はきっとわたしだけではないはず。

今の時代、「汚い!」と、ぺろりなんてできなくなってしまったけど(あの当時だって、恐らく汚かったんだと思うが…)、そんなことを認識もせず、無邪気に遊ぶひとつのおもちゃのような存在だった気がする。つららって。もちろん、見ていても面白いし、キレイだし。
だけど、札幌ではそうはいかない。
恐ろしい武器にもなる、脅威の存在なのだ。
雪道を歩くから、つい転ばないように足元を見てしまいがちなのだが、敵は上にもいる。そう「つらら」だ。先ほどの金沢での可愛げなつららとは程遠く、それは巨大サイズ。例えるなら
チンパンジーと象くらい違う(多分)。
家の軒先などから、ずらりと姿を見せるつららは、日に当たるとキラキラして、そりゃ結構きれいなものだが、うっかりそれが頭の上に落ちてこようものなら「死」にもなりかねない。そんなこと言ったら、屋根に積もっている雪だって一度に雪崩のように落ちてきたら、脅威である。毎年そういう事故で亡くなる人がいるのは事実だから、気をつけていても免れないことがあるのはリアルな雪国の話。
とまあ危険なのは当たり前じゃーん、と言われるくらい皆わかっているので、札幌の屋根は、雪が積もりにくいよう平らに作られていたり、屋根に「雪止め」があったりする。だからある程度は安心なのかもしれん。
札幌に住んでいる人は、基本的にそういう冬の危険を知っているので、気をつけて暮らしている。「危険・注意」なんて書かれた札が歩道に出されていたり、通らないようにポールが置かれていたりなど、皆お互いへの気遣いもある。
でも、こんなに「つらら」が巨大だと、昔のわたしのように
「遊び友達」あるいは「水分補給」「魔法の杖」
みたいな使い方はもう、札幌ではしないんだろうな。今の子どもたちは、そういう遊びがないってことだよね。そもそも「つらら」って、札幌に来るまでは「つらら」「ツララ」のイメージだったけど、札幌のそれはまさに「氷の柱」だもんね。言葉って、漢字ってすごいや。
観光として札幌に来たときには、ホントに中心部だけだとその巨大な氷柱には会えないけど、ちょっとだけ離れると見られると思うので、ぜひ見てみて欲しい。ビル街にはないけど、少し低層の建物であれば、余裕で「氷柱」に出会えます!古い建物の日陰なんかには、「げ!!」と声が出るくらい氷柱ができていることも。
定山渓温泉などまで足を延ばせば、もちろん巨大かもしれないけど、そういうのが市内の街なかで見られるっていうのが、札幌の面白さかもしれないなぁ。