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せ「セキセイインコ」


 犬猫は飼ったことがない。唯一私が子ども時代から馴染みのある生き物は、セキセイインコだけ。小学生の時に、祖父の家の庭先に迷い込んでいたインコ。保護して、うちで飼うことになった(今の時代は警察に連絡しましょう)。名前は「まよちゃん」…岡本真夜ではない。迷い込んできたから「まよ」。さらに近所の家から男の子インコをもらった。名前は「のっち」。芸人ではない。その家のお兄ちゃんが「のぶちゃん」だったから「のぶちゃんち」からの「のっち」。

命名について、私には責任はない。

 2羽はめちゃくちゃ可愛かった。飼い始めてしばらくすると、父がインコのための「巣箱」を用意した。理由を問うと「多分、まよちゃんとのっちは、赤ちゃんができるから。巣箱の中で、卵を産むんだよ」と。父の目は輝いていた。幼き娘に命の誕生を見せたい!命の尊さを我が娘に教えたい!などと思っていたのかもしれん。


 そのうち、父の言う通りまよちゃんは卵を産んだらしく、巣箱にいることが多くなった。しかしまだ小学生の阿呆真っ盛りの自分。まよちゃんが気になって気になって仕方ない。父、曰く「多分、卵が産まれたんだと思うよ。でも、人間に見られたらインコは卵を温めなくなるらしいから、絶対に巣箱を開けちゃいけないよ

 「その箱を開けてはいけない」と言われて、開けない小学生はこの世にいるだろうか。

 私は期待に応えて、開けた。

 卵は3個くらいあったように思う。おおお!本当だ!卵だ!と感動したあの場面は、いまだに忘れない。でもまよちゃんは、そのまま卵に見向きもしなくなった。

 父の言う通りである。



 私も、インコの赤ちゃんを楽しみにしていたのは事実だが、それよりも小学生には「好奇心」という優先すべき事柄がある。父には怒られた。6歳上の姉にも怒られた。母は「あーあ。馬鹿だね」と言っていた。ごめんねまよちゃん。大人になった今は、謝る。

 その後、大人になって1人暮らしを始めたころ、ふと思いついて向かいにあったペットショップを覗いてみた。そうだ、インコ、飼おう。


 大きなカゴの中でビチビチと飛び回るセキセイインコたちの中で、1羽だけやたら周りに圧倒されて消極的なオスがいた。コバルトブルーのキレイな色だったこともあり「私がその雑多な世界から、君を救ってあげようじゃないか」と衝動買いした。インコ1羽で幸せなもの。「屋久島がじろう」と命名し、いつもがじろーがじろーと可愛がった。

 すでにそれなりの大人のインコだったので、おしゃべりもせず、手乗りにはならなかったが、放鳥させているときは、甘えてきた。しかも、消極的だった性格ゆえか、わかりやすく肩に止まってくるなどはせず、地味に「私の視界に入るように、歩く」という行為でアピールしてきた。いつもは飛ぶのに、パソコンに向かう私の向こう側をゆっくりと、とてとてと歩くのだ。なんという可愛さ!!

 1年くらい仲良く暮らしていたが、別れは突然やってきた。それは夏の暑い日。私が西日の当たる出窓にがじろうのカゴを置きっぱなしで、丸1日仕事にでていたせいで、

熱中症。

 すまん。本当にごめん。ごめんよ!!


 反省はたっぷりしたが、セキセイインコはやはり可愛い。札幌に引っ越してから、20年ぶりくらいにまた飼い始めた。今度はヒナから差し餌をして育てたので、そりゃあもうなついて可愛い。パソコンに向かってマウスを動かしていると、そのマウスに嫉妬してまとわりつくという可愛さ!自分の名前「てつお」も覚えて「てちゅ、てちゅ」とおしゃべりもしてくれる。

 それもつかの間、飼い始めて1年。

本人が結構なレベルのクールな成年男子になってしまった。

 それには深いわけがあるのだが、それはまた別のところで話すことにしようと思う…。気になるだろ?エッセイの「タロットカード」まで待たれよ。