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  • 執筆者の写真KANAZAWAyuuki

ね「眠り姫」


 幼い時から、朝が苦手だった。と言っても、寝起きが悪いわけではない。起こされたらちゃんと起きたし、その1分後には朝ごはんも食べられた。「寝起きでは苦労しなかった」と母も言っていたし。では何が苦手だったのか?というと。

 んもう、いつも眠くて起きるのが嫌だったのだ。学校に行くために毎朝決まった時間に起き、支度をして出かける。この当たり前のことが「なんかすごく嫌だったのよね」という人は、日本中にいると思うがいかがなものか。それでも皆起きている。偉いよなぁと思う。


 大学生になる時、生まれて初めて「毎朝決まった時間ではない」ということを期待して、わくわくしていた。1時間目から授業の日もあれば。3時間目(つまりは午後)からの日もある。その日によって、縛られない朝時間というのは、私にとって非常に大事なことだった。しかも寝るのも早いため、「佑樹は22時過ぎには、もう連絡つかない」と友人たちから言われていた。しっかり寝ているので電話にもでないのだ。


 その後社会人となっても「自宅兼事務所」(まぁ在宅ってやつね、今は)であったわたしには「毎朝7時起床」ということはなく、自分の好きな時間に起きて好きな時間に寝ていた。もう、ダメ人間まっしぐらである。

 しかし、ある時転機が訪れてしまった。

 「結婚」だ。

 自分の時間はどうでもよくても、夫は会社に行く。一緒に起きて朝ごはんの支度をせねばならない。

 誰かが結婚とは忍耐といったが、あれは本当だ。好きな人のためとはいえ、結構つらい。そしてさらに追い打ちをかける出来事が。

「子どもの誕生」

 生まれたての赤ん坊に、昼夜翻弄されて睡眠がなかなかしっかりとれないことはもちろん、成長をとげて小学校に入ったら完成!でもなく。再び自分の小学生時代ルーティンを繰り返す羽目になる。親になるというはこういうことか…再び朝寝坊のできない生活。

 そう考えると、人生のほとんどが決まった時間に起きなくてはいけないということだ。これはもう、わたしのような人間にはつらい事実。だってわたしって「眠り姫」なので。いつまでも寝ていられる性分。王子様がキスしてくれても恐らく起きない。しかし、札幌に引っ越してからまた新たな直面に向き合うことに。


「眠り姫の座を奪われる」という不測の事態。

 次女が長い春休みに入った途端、朝に顔を合わせることが一切なくなった。つまり娘は学校がないので起きてこないが、わたしは仕事に行かなくてはならないので出かけると、その日は帰宅するまで顔を合わせない。うぬぬ。わたしの「姫」の座は世代交代なのか。そうなのか?いや、すでに「姫」という年齢ではないし、王子も来なそうだし、これはもう「女王」になるか殿堂入りするかしか選択肢はない。


 昼過ぎまで寝続ける娘に「お姫様はお目覚めですか」とメッセージする。それでもなかなか既読がつかなくてイライラする。くそう。しっかり「眠り姫」に育ててしまった自分を恨みつつ、この年の春に娘は家から旅立っていいた。新しい生活で、彼女は朝起きられるのか?かーちゃんとしては心配がつきない。

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