KANAZAWAyuuki
け「毛」
更新日:2022年12月25日

うちの母には、毛がない。
もちろん動物的にまったくないわけではなく、産毛とかはあるのだけど、例えば女性が普通は手入れをするような「腕」や「足」などに、処理をするような毛が生えていない。阿呆みたいに、つるっつる。
脇やもっと下の方などは、大人になるにつれて「そこに毛はあるのか」と聞きづらくなってしまった。幼い時の記憶を呼び起こせば、一緒の入浴時にツルツルのそこを見た思い出はないから、恐らく問題の箇所については毛があるのだと思う。
そんな母に似たのか、わたしもかなり薄い。
腕、足、脇などなど日本の一般女性が普段お手入れするような箇所には「こんにちは」程度しか生えてない。小学5年生くらいになると、クラスメイトでも体格のいい子は夏のプール教室のクロールした瞬間に「何か生えておる」的に
みんなにざわっとした空気が流れる。

その頃は「わたしって背も低いし、カラダが小さいからだな」と納得していたが、中学生になっても高校生になっても生えてこなかった。大丈夫なのか??と不安になって過ごしていたが、大学生になったころ「あ、母もそうだからだ」とようやく理解。今でも脇は、年に数本抜くくらいのレベル。ほぼ生えていない。
なんてことを人に言うと、相手が女性の場合はほぼ100%羨ましがる。
こちらにその気がなくとも、「自慢話」に当たるらしいということに気が付いたのは、高校生の時。つるんとしていることだけが、とりえのわたしの足を見た友人が「佑樹はさー、どうやって、足の毛の手入れしてんの?」と聞いてきた。
はい?手入れ?何の?どこの?してないけど。
というやり取りをして以来、あまり女性にこの話をするのはやめた。
はあ?生えてないってどういうこと?喧嘩売ってんのかこら。
という勢いで、皆様はお怒りになる。ごめんね。だって生えないの。わたしって天使だから(謎)。
札幌に引っ越して住み始めたころは、すでに40代なので、もううるさい女子はいない…と思っていた。ところが。
「ママってさー、娘の脱毛についてはどう思ってんの」
なんと我が娘が成長し、ムダ毛を気にする年になってしまった!!これは予想外だ。そして、母からわたしに遺伝したのに、娘たち(2歳差で2人)にはなぜか一般庶民のようにボウボウと生えている。特に次女の方は、「そういえば生まれたときから、背中がぼわっとしていたような」という記憶もよみがえってきた。
「脱毛に行きたい」という年頃。
いやー、そんなこと言われたって、まともにこれまで「毛」に向き合ってこなかった自分には、そんなもの意味がわからないわけで。とはいえ、札幌には多くの「毛」を退治してくれるお店がありまして。まずは本人たちが自分で通いやすいよう、近所のショッピングモールに入っているお店に行ってみた。
「保護者の方もご一緒にお話をお願いします」と言われ、脱毛の説明を受ける。未成年は保護者の同意が必要だし、当然のようにわたしが支払いをするわけで。
話を聞いてもちんぷんかんぷんなわたしをよそに、お店の女性は娘たちに「できるだけ早い年齢から処理をしておくと、あとから楽ですよ。理解のあるお母さんでよかったね」と言っている。
よかったね、娘たちよ。素敵なお母さんで(自分)。
自分の専門外だったからこそ、君たちの意思に寄り添っただけのことだが。
それ以来、姉妹は仲良く脱毛に通っている。
わたしはもう、ついていかない。娘たちが「お母さんは相談にのってくれない」的なことをお店のお姉さんに言うと、「お母さんは毛がないもんね」と返事がきたらしい。さすがプロ。見てわかるのね。
でもね、その表現、微妙なのでやめていただきたい。