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  • 執筆者の写真KANAZAWAyuuki

へ「部屋」


 小学生の時に、初めて自分の部屋ができた。当時の自宅は2階部分に3つ部屋があって、ひとつは両親の部屋。残りの2つを姉妹でわけるというふうになったのだが、それが4.5畳洋室と6畳の和室だった。

 洋室は東向きのベランダに隣接していたため、洗濯物を干す母が毎日のように出入りする。しかし壁の一面がおしゃれな柄入りで、しかも作り付けの飾り棚があった。昭和のわりにやたら凝った洋室だったのだ。一方和室は、「ザ・和室」。それ以上の説明はいらない。さて、youならどちらの部屋を選ぶか?


 当時小学生だったわたしは、当然ながら素敵な洋室に憧れていたため、そちらを所望した。しかし6つ上の姉も洋室を要望したため、いきなりの姉妹喧嘩が勃発。どちらも引かない。狭くても、何だか素敵なインテリアにしたかった年齢では、洋室に決まっている。

 そんな時、6つ違いの姉妹に起こりうるのは何か。答えは明確。「姉の口車に乗せられる妹」の誕生だ。

 じゃんけんをしたような気もする。勝ったような気もする。どちらでも選んでいいよ、と言われた気がする。そんな状況で「6畳の方が広いし、それにお母さんも入ってこない。さらに和室にはエアコンがついている」という事実を、まぁうまいこと姉に力説された記憶がある。結果わたしが和室になった。小学生時代の6歳差というのは恐ろしい。

 確かに東側の窓に沿って学習机を置くと、明るくてなんだか勉強もはかどりそうだったし、すぐ横にエアコンもあったから快適に思えた(洋室にはなかった)。6畳の個室に2段ベッドのひとつを置いて、これから1人でゆっくり眠ることを想像すると、ちょっと大人になったような気がした。

 

 しかし、現実はそう甘くない。

 ベッドは今まで通り「6畳の方が広いから」と2段のままわたしの部屋に置かれた。それによって、母も時々休日にそこで昼寝をしていた。そしてクローゼットのない洋室で暮らす姉の荷物は、和室の押し入れに入れられていた。

 思ってたんと違う!!



 何度そう言って吠えたことか。6歳年上の姉というのは恐ろしい。とはいえ、一度決まったことはそう簡単にくつがえせない。部屋の引っ越しも面倒だ。そしてこの家を出る18歳まで、わたしはここで過ごすこととなる。


 札幌に移住したのは、それからもう何十年もあと。最初は、仕事場としてホテル代わりにアパートを借りた。当時は関東にも家があったから、毎日住むわけでもないし、出張の時に過ごす安定した場所が欲しかった(札幌はアイドルのライブやイベントなどがあると、急激にホテルの値段が上がるので、ビジネスマンはこれに翻弄されるのが辛いのだ)。

 そうして最初に借りた部屋は、キッチン込みのワンルーム8畳に、4.5畳のロフト付。トイレとお風呂は一緒だったし、洗濯機置き場もなかったけど、毎日住むわけではない分、十分快適だった。それよりも、あの頃の自分が欲しかった広さに加え、「4.5畳」もついているという、この素晴らしさよ。当時のわたしが見れば「いいなぁ!広~い!!」と憧れたに違いない。ああ、わたしも大人になったものよ。自宅があるにもかかわらず、ここを借りるとは、立派なもんだ。

 などと偉そうに言ってみたが、家賃を聞いて驚くなかれ。なんと21,000円。これに光熱費などあれこれはかかるものの、安すぎやしないか。もちろん、オートロックもないし1階だし古いし、決して良くはない。でも「さ」のエッセイでも書いたように、サッポロビール園の近くでもあり、決してそんなに郊外ではないのだ。

 札幌は家賃がめちゃくちゃ幅広い。もっと中心部であっても、3万円台から10万円台のワンルームもある。当然ながら築年数や条件は異なるが、そんな古くて楽しい物件もまだ多く残るのが面白い。もし札幌に移住計画があれば、ぜひ楽しんで部屋探しをして欲しい。

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