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  • 執筆者の写真KANAZAWAyuuki

は「花火」


 花火と言えば、大学時代が一番思い出深い。

 なんといっても大学時代を過ごした新潟県は、日本でも屈指の花火王国。長岡市や小千谷市の3尺、4尺玉は日本最大級だ。彼氏と一緒に…というよりも、サークルのメンバーで集まって行くことが多かったように思う。皆で集合してから、クルマを持っている先輩などに便乗して連れて行ってもらう、1年生がまたかわいい。

 わたしがクルマを持ったのは3年生の時だったのでやや遅めだったが、だいたい誰かを乗せて向かうことが多かった。かわいい1年生の男の子か、あるいは親友限定だが。 

 数台連なって花火大会の街に向かう。長岡の花火は多くの人が集まるから、昼間から出発して場所取りをするのが大変だったっけ。そして川の向こうにどかん!と打ちあがるのをみんなで見るのが楽しかった。毎年「来年は2人きりデートで花火を見たい」と思いながらも、サークル内に彼氏がいたので、あまりそれは叶わなかったように思う。


 そして、なんといっても3尺玉の発祥地としても知られる小千谷市の花火「片貝まつり」。これは長岡に比べると、ものすごく打ち上げ場所が近い。この時ばかりは、浴衣など可愛げなものは決して着ない。そしてできればレジャーシート持参。え?外で花火を見るなら、だいたいレジャーシートっているのでは?と思ったあーた!!そう、その通りなのだが、片貝まつり」の時には、ちょっとだけ違った使い方をするのだ。

 レジャーシートを広げ、そこにごろりと寝転ぶ。そう、座らずに「寝る」のだ。どかん!と打ち上げが始まると、それはもう星々が目の前に落ちてくるかのような美しい光景が見られる。もちろん、星などではなく完璧な「火の粉」。

 とはいえ、本当に顔に当たったことはもちろんないのでご安心を。とにかく打ち上げ場所が近い上に、花火そのものが大きいから、まるで降ってくるような感覚を味わえる。あれはもう、片貝まつりならではの体験。



 若かったのもあるし、わいわいと皆で寝転んで見た花火は、今でも脳裏に焼き付いている。毎年9月初旬に開催されていたから、これが終わると「夏が終わったなぁ」と思ったっけ。


 そして時代は変わって札幌。なんとなく花火が物足りないのはわたしだけか?片貝まつりのスケールを知っているせいだろう。「友達と見に行ってくる」と出かける娘たちを見送り、特に必要以上に興味もなく、一緒に行く人もなくつまらない日々。しかしある年、知人が「うち、豊平川の花火がよく見えるから、来る?」と素敵な招待をしてくれた。

 総勢7名ほど。なんと生ビールサーバー(もちろんサッポロクラシック入り)まで用意をしてくれ、自宅から徒歩5分の距離にかかわらず、張り切って浴衣を着て押し掛けた。豊平川沿いに押し寄せる多くの人たちを横目に、へへい、わたしはここんちのマンションの中で見るんだぜいえい、と優越感でピンポンを押す。


 広いベランダで、クラシックを片手に眺める花火は、高層マンション、ビル、そして美しい漆黒緑の森を背景に、それはもう鮮やかに打ちあがった。

 ああ、違う街で、新しい仲間たちと乾杯をしながら楽しめるとは。

 あれから何十年もたったけど、1人ではなく、2人でもなく、何人かの気心がしれた人たちと過ごすって、心地よいな。一緒に美しいものを見るというのは、いいもんだなぁ、と大学時代を思い返しながら、花火の合間に急いでビールサーバーへと向かうのであった。ごくん、どかん、どかん、ごくん。

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